【プルヴワール/ペシェ666】 第四話:暁と黄昏の境界(後編)
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ラノ ♂ 外見年齢18歳
⇒青永山神社(セイエイザンジンジャ)の神社の神主で、この世で最も神に近いとされる「かんなぎ」の地位に就く少年。
感情の起伏に乏しく、年齢の割りに落ち着いている。
悪気はないが口が滅法悪い。
青永山神社は雨に縁のある神社で、いつも神社一帯だけ雨が降っている。
カラス ♂ ???歳
⇒青永山神社に暮らすカラスの物怪。
飄々として掴みどころのない性格で、ラノを弄るのが好き。
彼の補佐として神社にいるが、雨が苦手な為にほぼ外出している。
ロイヤス ♂ 23歳
⇒国立シュバイツァミッヒ大図書館にて、たったひとりで司書を務める青年。
人との接触を好まなく、いつも一人で図書館に引きこもっている。
体が弱いので、たまに吐血沙汰になることも。
フォルクス=アイゲル ♂ ???歳
⇒国立シュバイツァミッヒ大図書館でたまに見かける人物。
その正体は作家アイゲルの作品「魔術師のいる図書館」から抜け出した作中の登場人物である。
幽霊のような存在で、普通の人間には見えないので司書であるロイヤスには見えていない。
奇抜な装いで不可思議な言葉を操っているが、妖しい以外に特に害は無い。
*配役表* 比率3:0:2 (5人台本)
【城下町の一角、カラスを探す二人】
ロゼット:いないねぇ…君のペット
ラノ :こんなことなら…籠に入れておくべきだった
ロゼット:籠はいいけど鍵も忘れないように、ね。
それにしても彼の行きそうな場所とか分からないの?
ラノ :……知らないな。
ロゼット:そうやっていつも放し飼いしてるってワケ?
まったく…そんなんじゃ逃げるでしょ…
ラノ :いつもは気配を探れば奴の居場所くらいすぐに分かる。
けど…昨日から奴の気配がしないんだ
ロゼット:どういうこと…?
ラノ :意図的に隠れているか…または
ロゼット:死んだか、か
ラノ :……死にはしないとは思うが…
ロゼット:まぁ君のペットだしねぇ。その可能性は無いと僕も思うけど
ラノ :面倒な奴だ…
ロゼット:とりあえず街中は下っ端に任せて、僕たちは図書館方面まで入ってみよう
【同じ頃、図書館に入っていくカラス】
カラス :(先日はお世話になりましたし、ロイヤスに差し入れでもしていきますか…)
カラス :お邪魔するよ。……って…いない、か…
アイゲル:…いらっしゃい、ヘレブ
カラス :おや、アイゲルじゃないか。ご主人様はご不在かな?
アイゲル:ジェランならば地下書庫に…。
カラス :また引きこもっているのかい?
アイゲル:また…サン・クウレしているよう…。可哀想なジェラン…
カラス :サン・クウレ…それは一体なんの事だい?
アイゲル:地下書庫に行けばわかる事…。
カラス :…ええ、わかりました
カラス :(…ふぅ…、不可解な言葉遊びは疲れますねぇ…)
【地下書庫、ほの暗い明りが狭い室内の床に点々と落ちる赤を照らす】
アイゲル:ほら…あそこ
カラス :これは…血…もしかしてまた吐血して…
ロイヤス:…誰だ…
カラス :こんにちは、引きこもりの吐血司書さん
ロイヤス:カラス…なんでお前がここに…。
カラス :いや、一階にいないから帰ろうかと思ったんですが、
ご丁寧に案内して貰ったものでね
ロイヤス:…案内?馬鹿を言え、ここには俺しかいない
アイゲル:悲しいよ、ジェラン。こんなに傍にいるのに…
カラス :いつになったら気づいてくれるんだろうね、ほんとに。
まぁ愛の力に引き寄せられたって事にしといてください
ロイヤス:…お前は一体何をしに来た…。
生憎俺は見ての通り暇じゃない…。書庫の整理があるんだ
カラス :吐血しといて何が書庫の整理ですか。養生してくださいよ
ロイヤス:悪いがお前みたいに遊んでいられないんだ。養生も何もあるか
アイゲル:ジェラン…最近はずっと働き詰め…
カラス :そうなのかい?
アイゲル:…ヘレブのエイルをジェランにもあげたいくらい
カラス :エイルが何か分からないけれど…まぁ休めって事かな
ロイヤス:さっきから何をブツブツ言っている…?
カラス :いやね、図書館の妖精さんがロイヤスも休んだ方がいいんじゃないかと仰ってまして
ロイヤス:カラス…お前ついに頭もイカれたか?
カラス :それは前から…じゃなくてですね…。貴方も人間ならば無理はしないことですよ
ロイヤス:フン、どうせ使い物にならない体なのは分かってるんだ。…忠告だけ受け取っておく
カラス :貴方はそういう人ですからねぇ。これ、差し入れです。
ロイヤス:…なんだこれ
カラス :チョコレートですよ。
ロイヤス:…俺に鼻血まで出させるつもりか
カラス :何言ってるんですか、疲れているときは甘いものですからね。
ロイヤス:…………
カラス :さて、行きますか。
アイゲル:…また来て、ヘレブ
ロイヤス:…もう二度と来るな
カラス :はいはい、じゃあまた。…ロイヤスの事、よろしくね
アイゲル:了解…
ロイヤス:…独り言多くなったな、あいつ…。本当に大丈夫か…?
【図書館付近】
ロゼット:さすがに図書館には来るわけないかな?
ラノ :知らない。たまに入り浸っている時もあるみたいだが
ロゼット:…はー。何だかんだでもう夕方だねぇ…。
なんで君と一日中デートしなきゃなんないのさ…
ラノ :デートついでに殺せばいい。俺を殺すのが趣味なんだろ?
ロゼット:そう言われるとヤる気無くなるじゃない…。
もっと嫌がるか、いつもみたいに積極的になってくれないと
ラノ :…相変わらず最悪な性格してるな、お前
ロゼット:褒め言葉だね。腹黒いサディストでも目指そうかな
ラノ :目指すまでもないだろ…
ロゼット:そうかな?
ラノ :(なんか調子狂うな…。なんでこいつと二人でカラスを探してるんだ、俺は…)
ロゼット:っていうかさ、僕らも何だかんだで付き合い長いよね。…300年?
ラノ :…そんなになるのか?
ロゼット:君ね、仮にも人を処罰しといて忘れてるってどういうことさ…
ラノ :過ぎた事は気にしない主義だからな。お前と違って
ロゼット:…僕は忘れないさ。君を殺すって決めたんだ
ラノ :だから、いつになったら俺を殺すんだ
ロゼット:仕方ないじゃない、何度殺しても君が死んでくれないんだから
ラノ :俺だっていつか死ぬ。その日まで頑張れ
ロゼット:…うわ、何?何で応援されてるの、僕?どうしたのさ、ラノ?
ラノ :おかしな事を言ったか?
ロゼット:相当おかしいよ!?気づいて!?
ラノ :お前のせいで調子狂ってるだけだ
ロゼット:人のせいにしないでよー…。まったく…
ラノ :…お前が俺を殺したら…そうしたらお前もきっと…
ロゼット:…え?何?なんか言った?
ラノ :……ここにはきっとあいつは居ない…。いったん神社に帰る
ロゼット:変なの…。それじゃあ僕もついていこうかな
ラノ :……
ロゼット:なに、その顔
ラノ :……別に。行くぞ…
ロゼット:…なんだよ、もー…。
【04:暁と黄昏の境界(後編)/完】
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